優しいタクシー運転手の人生が一気に狂った「コラテラル」 レビュー

ドラマ
Collateral (1/9) Movie CLIP – Nobody Notices (2004) HD

作品・出演者情報

監督

マイケル・マン

キャスト

  • ヴィンセント – トム・クルーズ
  • マックス・ドローチャー – ジェイミー・フォックス
  • アニー・ファレル – ジェイダ・ピンケット=スミス
  • レイ・ファニング – マーク・ラファロ

個人的レビュー

平凡なタクシードライバーのマックスが殺し屋の手伝いをさせられるストーリー。

もし自分の身に降りかかったら……と思うと最悪だが、数ある殺し屋の登場する映画の中でも本作品は最も現実的に巻き込まれそうな設定だと思う。

序盤でびっくりしたのは、トム・クルーズが出てくるのが結構遅かったところ。もちろんストーリー上は何の問題もないのだが、超主役級の役者が出てくるのがこんなにゆっくりな映画ってあるんだなと驚いた。

もしかしたら、ミッション:インポッシブルシリーズばかり見ていたから感覚がおかしくなっているだけかもしれない。とはいえ、最初にアニーとのエピソードが入っていることでゆっくりに思えたのは事実。

アニーとは、高速を使うか下道を使うかでどちらが早いか賭けをする描写がある。この描写から私が思ったのは、マックスがこの街のことをよく知っていて、嘘をつかない正直な人物という印象をアニーに対して与える役割をしていたのかなということ。この賭けによって、終盤でビルにいるアニーに電話をかけて逃げるように説得することができている。それは、連絡先を教えてくれたという話だけでなく、検事をやっているアニーがマックスの言葉を信じるだけの根拠になっている。

さて、この映画は「都会」をどう捉えるか?という人々の視点を描いた作品だ。

作品の舞台となっているLAは、マックスにとっては「家」であり、ヴィンセントにとっては「他人」だ。

この主張は、作品中のふたりの行動にもよく現れている。

人が死ぬのを自分のことのように悲しみ、入院中の親を悲しませたくないとリムジン会社を経営していると優しい嘘で安心させるマックス。

LAを地下鉄で亡くなった男性が6時間も気づかれなかった「他人の町」と表現し、機械的に依頼に沿って人を殺していく殺し屋のヴィンセント。

この対比は、二人の人生観にも現れている。12年間も夢のための準備期間としてタクシードライバーをやっているマックスと、10分先の未来すら分からない、人生は短いと言い切るヴィンセント。

二人は常に対比で描かれているが、終盤でマックスは流されるままの人生に終止符を打たんとして、状況を変えるアクションを起こす。ヴィンセントに流されるまま、大好きなLAで殺し屋を運ぶドライバーをやっているこの状況を変えたい。そんな気持ちがマックスを突き動かしたのだろう。

アドラー心理学的に言えば、マックスはお金がないと理由をつけて夢を追わないという人生を選択している状態だった。自分の人生に嘘をついている彼が、皮肉にも殺し屋の生き様によって変えられてしまったのは面白い。

良かった点

良かった点は、結末があっけないところだ。

普通、映画のクライマックス、結末は見るものを感動させ、時には涙を流す人もいるものだろう。しかし、本作品ではヴィンセントを始末したあと、電車から降りたマックスたちが歩いていくだけの描写で終わる。アニーとのその後や、タクシー会社との顛末など気になる点はたくさんある。

でも、唐突に、物足りなさを感じさせて終わる。

上述のとおり、この映画は「都会」をどう捉えるかを主眼とした作品だ。ヴィンセントの最後のセリフにもあるように、LAでは地下鉄で誰かが死んでいても誰も気づかないような「他人の街」だ。

一晩の惨劇のラストでヴィンセントが死んだ。電車は闇に向かって走り出す。そして、夜明けの空の方へ向かってマックスは歩き出す。

それがまさに都会の在り方なのだ。多くの人が行き交い、様々な出来事が起きる。いろいろなドラマがある。誰かの人生が一変するような夜も、普段と変わらずに明ける。また、何事もなかったかのように街の生活は繰り返される。

だから、この作品には壮大なクライマックスなんていらないし、マックスとアニーの未来など描く必要もないのだ。

このあっさり感は、物足りなさではない。計算された、都会を最大限表現するための仕掛けだと私は思っている。

残念だった点

ヴィンセントがマックスの母に花を送ったのは、いまいち理由が分からない。彼自身、「普段と違う行動をすると怪しまれる」とマックスに話して見舞いに来たタイミングだった。それなのに、普段は買っていくことはないものを持っていかせるのは、ちょっと矛盾している気がした。ヴィンセントの意外性をここで引き出した理由がよくわからん。

もしかして、いつもと違うことをするとよくないぞということを体現したのか?その直後にマックスに資料を捨てられてしまうし。まあ、個人的にはいらない描写だったかなと思う。

終わりに

コラテラル。単語の意味は「巻き添え」だ。

都会で生きる人々は、何かの巻き添えになった時、人生が急激に変わっていくのかもしれない。

マックスが人生を変えた瞬間。それは、自分が大事にしていたモルディブのポストカードをアニーに渡した時だ。

彼自身もまた、他人同士の都会で他者を巻き添えにした張本人なのかもしれない。

これは、たった一夜の物語。

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