色々と非人道的な世界観「マイノリティ・レポート」 レビュー

SF
Minority Report (2002) Official Trailer #1 – Tom Cruise Sci-Fi Action Movie

作品・出演者情報

監督

スティーヴン・スピルバーグ

キャスト

  • ジョン・アンダートン – トム・クルーズ
  • ダニー・ウィットワー – コリン・ファレル
  • アガサ – サマンサ・モートン
  • ラマー・バージェス局長 – マックス・フォン・シドー
  • アイリス・ハイネマン博士 – ロイス・スミス
  • エディ・ソロモン医師 – ピーター・ストーメア
  • ギデオン – ティム・ブレイク・ネルソン
  • ジャッド – スティーブ・ハリス
  • ララ・クラーク – キャスリン・モリス
  • ウォリー – ダニエル・ロンドン
  • フレッチャー – ニール・マクドノー
  • ノット – パトリック・キルパトリック

個人的レビュー

未来のアメリカでは犯罪予防局が開設され、プリコグ(precognitive=予言者)と呼ばれる3人の予知能力者たちで構成された殺人予知システムに基づいて捜査がされるようになっていた。プリコグが予言した殺人犯となる市民は、殺人を起こす前に「未来殺人罪」という罪名で逮捕され、身体の自由を奪われる。末恐ろしい未来を描いた作品だ。

日本の警察を見ていても分かる通り、事件が発生してからでないと捜査できないというのが現代の司法の限界である。未遂で逮捕できると言われればそれはそうだが、刃物で刺したけど相手が死ななかったとか、物理的に相手にダメージを与えてない限りは殺人未遂に問われることはない。

人権の観点から見れば、本作品で描かれている未来殺人罪は大きな問題だ。たとえプリコグの予言精度が100%だったとしても、まだ何も法を犯していない人の身体を拘束して自由を奪うのは完全な人権侵害となる。本作品でも「殺人予知システムの全米展開の是非」を国民投票によって問うため、システムの完全性を調査するというのがストーリーの軸となっている。

もっとも、2002年公開の本作品の背景には、9.11以降にアメリカ政府が国民の情報を管理しようとしていることへの問いかけが含まれているのも事実だ。未来予測ができたらどんな世界が待っているのかを映像作品を通して考えてもらうという意図が感じられる。

さて、本作品ではトム・クルーズ演じる犯罪予防局の刑事であるジョン・アンダートンが、プリコグによって殺人を犯すと予言され、同僚たちに追われながら自分に何が起こるのか、なぜ自分が殺人を犯すことになるのかを探っていく。最終的にはプリコグが示した殺人の結論とは少しだけ違った展開になり、全て仕組まれた罠であったことを悟るのだが、「人権」の観点から見るとここで論理破綻が起こっている。

プリコグの示した未来をジョン自身の意思で変えることができてしまうのなら、今まで未来殺人罪で逮捕してきたことの正当性が全て崩れ去る。そこにifを感じさせてしまう展開だったことは大変残念だ。もし全てが罠だと悟って、真の黒幕にたどり着く展開にするとしても、まずはプリコグの予言通りに進めるべきだった。ジョンは自分の意思で殺人を犯してしまうが、その殺害の動機となった息子の写真や現場の証拠を頼りにストーリーを進めるべきだったのではないか。作品の根幹となる部分が揺らいでいるように感じてしまったのがかなり残念。

あと、もう1つ人権の観点で言えるのは、プリコグの3人の人権も完全に無視されている点は気になる。奇妙な水に浮かべられ、24時間体制で未来予知をさせられるって奴隷のような扱いだなと思った。巨匠スピルバーグの描く未来はこうも残酷なのか。そこは予言者ではなく、AIに任せてしまえばよかったのに。もしかしたら、それすらも現代へのアンチテーゼで、どこまで技術が進歩しても人智を超えるAIは完成しないということを伝えたかったのかな。

まあ、プリコグに殺人を予知されて自動車工場でウィットワーと戦うシーンが素手での殴り合いだったし、2054年の世界にしてはステレオタイプな感覚で作ってんなと思う部分もあった。どうせならそこも近未来的な発想で作ってほしかったなと思うのは贅沢なのかな。

……と、ここまで書いてきてハッとしたのは、この近未来の不完全さが「マイノリティ・リポート」に繋がっているのか?ということだ。

作品のタイトルともなっている「マイノリティ・リポート」とは、3人のプリコグの予知が食い違ったとき、システムの完全性を疑われないために少数意見を破棄するというシステムのことだ。簡単にいうと都合の悪いことを隠蔽する仕組みのことで、開発者しかその事実は知らない。実際にシステムを運用していたジョン自身もこのことは知らず、自分の潔白を証明するために開発者を訪ねたタイミングでその存在を知る。

結局のところ、人間が作る世界に絶対はない。そんなメッセージを私は読み取った。

ちなみに私はこのタイミングで黒幕を確信した。というか、洋画はこういった展開が使い古されすぎていて途中から展開が読めてしまうことが多い。本作もそういったパターンに当てはまる作品である。

近未来を描いた作品として、面白い作品だったとは思う。どこまでテクノロジーが進歩しても経済格差が是正されることはなく、スラムは残るという未来の描き方には興味を持った。

良かった点

作品の良かった点は、テクノロジーの進歩の描き方にワクワクする点だ。現代を席巻しているタッチパネルの操作はなくなり、非接触型のパネルを駆使して犯罪捜査をしているのはかっこいい。そんな未来が見てみたいなと思えた。

2002年公開の映画だから、その頃はまだiPhoneも登場していない。タッチパネルが普及していない時点でその先を描いていたのは、さすがSFの巨匠スピルバーグといったところか。

また、トム・クルーズの演技が近未来SF映画にヒューマンドラマ的要素を足しているのはさすがだと思った。息子への愛情、誘拐犯への憎しみなど、本来SF作品では軽視される人間味の部分をしっかりと表現していた。これまでSFを多く手がけてきたスピルバーグの譲れないポイントだったのかもしれない。

残念だった点

いらない描写が多かった。例えば、交換した眼球を落としてコロコロ〜ってなるところなんて絶対にいらない。あそこはハラハラもしないし、なんのために入れたのかわからん。グロいだけ。

個人的には論理破綻がとても気になる。マイノリティ・リポートの有無に関わらず、これまでシステムを信じて何人も逮捕してきた側が、当事者になると逃げ惑うという矛盾だけは気になる。

後半からは過去の誤認逮捕の可能性と運用してきた制度の崩壊というアンビバレントが焦点となって展開するが、その最後の答えもまた、プリコグの予知した未来とは違った結果(自殺)で終わるのはどうなんだろう……

終わりに

総括としては、良くも悪くも近未来を覗き見ることができた気がして面白かった。

また、この映画には原作となったフィリップ・K・ディックの短編小説(The Minority Report)があるので、機会があればそちらも読んで改めて作品に想いを馳せたい。

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